死亡事故の対応
1 死亡事故の損害賠償請求の項目
死亡事故の損害賠償の4分類 | |
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分類 | 項目 |
A 死亡するまでの治療などの損害 | 救助捜索費、治療関係費、休業損害など |
B 葬儀費 | 戒名、読経料、葬儀社への支払など |
C 逸失利益 | 本人が生きていれば得られたはずの収入 |
D 慰謝料 | 被害者および遺族に対する慰謝料 |
葬儀費
葬儀費は葬儀そのものにかかった費用に加え、49日の法事の費用、仏壇購入費、墓碑建立費が若干認められる場合もあります。葬儀費には上限があり、自賠責保険では60万円までとされていますが、弁護士会の基準では130万円~170万円程度が適切とされています。
慰謝料
被害者が死亡した場合の慰謝料には、大きく分けて2つの慰謝料があります。1つ目は、被害者本人の慰謝料、2つ目は遺族の慰謝料です。
慰謝料の場合も葬儀費同様に自賠責保険の基準、任意保険の基準、裁判基準の3つがあります。
死亡慰謝料の裁判基準 | |
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ケース | 慰謝料金額 |
一家の支柱の場合 | 2,700~3,100万円 |
一家の支柱に準ずる場合 | 2,400~2,700万円 |
その他の場合 | 2,000~2,400万円 |
自賠責保険の基準の慰謝料 | ||
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対象 | ケース | 慰謝料金額 |
被害者本人 | ― | 350万円 |
被害者の父母、配偶者、子供 | 遺族が1名の場合 | 550万円 |
被害者の父母、配偶者、子供 | 遺族が2名の場合 | 650万円 |
被害者の父母、配偶者、子供 | 遺族が3名以上の場合 | 750万円 |
2 死亡事故の交渉開始のタイミング
死亡事故の場合には、まず被害者の通夜、葬儀が行われます。加害者が刑事事件として業務上過失致死などで逮捕されていない場合には、加害者が通夜、葬儀に参列することが多いといえます。中には参列しない加害者もいます。その場合、保険会社の担当者が代わって通夜や葬儀に参列する場合もあります。
死亡事故の場合には、被害者が生きている場合に比べ、遺族の悲しみもひとしおです。したがって、保険会社の担当者は、通夜や葬儀の際にいきなり示談の話を持ち出すようなことはしません。たいていは、四十九日が終わった時点から具体的な話し合いが始まることになります。
刑事裁判が終わった後で示談交渉に
死亡事故の場合には、加害者が業務上過失致死等で逮捕され、起訴されることもあります。したがって、被害者の遺族としては、この刑事裁判もにらみながら示談交渉を進めることが必要になります。示談が成立すると、一応被害弁償が終わったとみなされ、刑事裁判における量刑が軽くなるのが通常だからです。このようなこともあり、死亡事故の場合には、刑事裁判が終わった後で示談交渉に入ることも多くあります。
もっとも、加害者が、量刑を軽くすることを目的として、損害賠償金とは別に、贈与として見舞金の提供を申し出ることがあります。この場合には、その金額や自分の気持ちなども総合的に考えて、その申し出を受けるかどうか決めることになります。
3 死亡事故の場合の注意点
(1)消滅時効
死亡(即死)の場合には、治療行為も後遺障害も発生しません。したがって、死亡によって即時に損害額が確定し、その損害額について示談交渉が行われてゆくことになります。
死亡事故においては、死亡によって損害額が確定することから、その時点から消滅時効が進行します。また、ひき逃げ事故等で加害者がわからず事故から20年が経過したときは、それで損害賠償請求権は時効によって消滅してしまいます。
消滅時効が成立した場合には、加害者に対する請求権があっても裁判所において認められなくなってしまいますので、消滅時効にかからないよう(消滅時効の中断措置等)に注意が必要です。
(2)相続手続き(相続人の確定)
交通事故の被害者が死亡した場合、被害者の相続人が、加害者らに損害賠償請求をすることになります。被害者の家族全員が加害者らに対して損害賠償を請求できるわけではありません。
したがって、死亡事故の場合には、まず、損害賠償請求権を持っている人は誰か、を確定する必要があります。
相続人の確定は、具体的には、被害者の戸籍を取り、そこから相続人確定作業を進めていきます。相続人が幼児や未成年者の場合には、被害者の戸籍を取れば、相続人が親であることが確定し、それだけで相続人が確定できることになりますが、成人している場合には注意が必要です。他に子がいる場合があるからです。相続人確定作業を行うには、被害者の出生児まで遡って調査することが必要です。
(3)近親者の慰謝料請求
死亡事故の場合には、相続の対象となる損害賠償請求権の他に、近親者は、被害者の死亡により、深い精神的苦痛を被っており、これは、被害者の損害賠償請求権とは別に、その近親者特有の損害賠償請求権が発生します。この点も忘れずに請求する必要があります。
ただし、裁判の場合には、事案に応じて近親者分も全て本人分として認められたり、本人分を減額する代わりに近親者分を認めたりして損害額の調整をしているようです。