治療段階のポイント
1 治療について(通院・入院)
交通事故によってお怪我を負われた場合、まずはその治療に専念することになります。以下では、交通事故での受傷の治療についての注意点をまとめましたのでご参考にしてください。
健康保険や労災保険の利用
交通事故での治療について、初診から健康保険を利用して治療を受けるのがよいでしょう。「自由診療」は、病院側が勧めることもありますが、健康保険を利用した場合と比べ治療費が高額になり、被害者にも過失があったような場合、保険で全ての治療費がまかなえなくなってしまうリスクがあります。なお、病院によっては、事故によるケガの治療での健康保険の利用を拒否するところがありますが、法律上、利用できないということはありません。
また、通勤途中や業務中の事故であれば、労災保険を利用することが可能です。
弁護士法人ベストロイヤーズ法律事務所では、約80%の方がおケガの治療中からのご相談です。交通事故の証拠の保全、今後の見通しの理解、不安感の除去などのため、お早目のご相談をお勧めしています。
2 治療に関係する費用
(1)治療関係費の範囲
交通事故の「治療費」として認められる損害は、病院などの医療機関に支払った必要かつ相当な実費全額です。
よって、受けた治療が過剰診療・高額診療または濃厚診療であるなどとして、必要性・相当性が否定された場合には、その部分の治療費は損害として認められず、自己負担となる可能性があるため、注意が必要です。
温泉治療・鍼灸・柔道整復・マッサージ費用,治療器具
これらの費用は,医師の指示に従って行ったものであれば,損害として認められることが多いです。もっとも、医師の指示や同意がない状況で行った場合には、治療効果が認められる等の事情がない限り、事故との「因果関係」が否定され,損害として認められません。また、治療効果が認められた場合でも,費用の全部が損害として認められない場合もあります。
個室・特別室使用料
入院中に、個室や特別室などを利用した場合、通常の治療費に加え、個室・特別室利用料を支払う必要がありますが、個室等使用料は,空きベッドがない場合や受傷状況から見て必要性が認められる等の事情がない限り、損害として認められませんので、注意が必要です。。
謝礼
医師に対する謝礼は、入院期間や受傷状況等を踏まえて、社会的通念上相当と認められる範囲内のものであれば損害として認められることがあります。もっとも、最近では謝礼を受け取らない医師が増えており、謝礼については否定される例が多くなっています。
(2)付添看護費
入院付添費
「入院付添費」は、医師の指示がある場合または被害者の受傷の程度・被害者の年齢等により入院付添の必要がある場合であれば、認められます。具体的には、職業付添人を雇った場合にはその実費全額、近親者が付き添った場合には日額5500~7000円程度が損害として認められます。
なお、これは病院で完全看護されていた場合でも同様です。
通院付添費
「通院付添費」は、交通事故の治療のための通院に、受傷の部位、程度や患者の属性(幼少、高齢者など)のため、付き添いが必要とされる場合に認められます。具体的には、日額3000~4000円程度が、被害者本人の損害として認められます。
自宅付添費
退院後、自宅で付添介護を行った場合、被害者に介護の必要がある場合であれば、「自宅付添費」が損害として認められます。
(3)入院雑費
「入院雑費」とは、交通事故によって負った傷害の治療のために入院する場合、治療費以外にも、日用品や食品の購入費、テレビの視聴代金等の支出が必要となります。入院雑費については、診断書等に入院の事実が記載されていれば、具体的な支出を立証することなく、入院1日につき1400~1600円程度が損害として認められます。
(4)入通院交通費等
被害者本人の交通費
通院交通費は、バスや電車等の公共交通機関を使用することが原則となります。その実費全額が損害と認められますが、タクシー代については、原則として認められず、受傷の部位、程度、交通機関の状況から、タクシー利用がやむを得ないと認められる事情がある場合に限って損害として認められるため、注意が必要です。
自家用車で入退院や通院を行った場合には、ガソリン代・駐車場代・高速道路料金が損害として認められます。
付添人、見舞い人の交通費等
近親者が付添看護のために医療機関を訪れた際の交通費については、被害者の症状や年齢等から付添看護が必要であると認められれば、これも被害者本人の損害として認められますが、医療機関が近隣である場合などでは、近親者の付添費用または入院雑費に含まれるとして、損害性が否定される場合もあります。
3 症状固定
治療によりケガが良くなり、最終的に完治すればそれが最も良いのですが、残念ながら,ある時を境に幾ら治療を続けても痛みがそれほど変わらないなど,大した効果が感じられなくなってしまうことがあります。このような状態を「症状固定」といい,この段階以降発生する治療費は,請求できなくなります(その段階で障害が残っている場合には,後遺障害に対する賠償の問題となります。)。
保険会社側から症状固定,治療費の打ち切りの話がなされますが,症状固定については専門家である医師とよく相談して決めてください。