Q 私は3か月前に、交差点で交通事故に遭いましたが、加害者が赤信号を無視して交差点に突っ込んできたため起きた事故なのに、今になって加害者がそのような事実はないなどと主張しています。事故態様についてはどのような証明手段があるのでしょうか。
A 交通事故の「事故態様」は、過失割合の根拠となるため、交通事故損害賠償の場面において、「損害」の認定と並んで非常に重要なものであり、とくに非常に激しい争いとなることがあります。
交通事故の事故態様については、とくに人身事故の場合、事故後に現場で作成される実況見分調書などの刑事記録が重要なものとなります。刑事記録は、刑事責任を追及するために作成されるものですが、民事責任の追及の場面においても重要なものとなります。
刑事記録は、刑事事件がどの段階にあるかにより、以下のように、取得の方法などが異なってきます。
1 加害者が不起訴の場合
刑事記録については、法律上はむしろ非開示が原則となります。被害者の方を保護する見地から、実況見分調書などの客観的証拠および供述調書については例外的 に開示が認められる運用となっています。運用としては、実況見分調書については開示が認められないことはあまりありませんが、供述調書についてはかなり厳しい運用をされているようです。
・実況見分調書 ・・・検察庁で、閲覧謄写申請が可能です。
・供述調書・・・被害者と加害者の言い分が対立しているときに、第三者である目撃者の供述調書があれば、決定的な証拠となる場合があります。
上記のように、加害者が不起訴の場合、開示が認められる可能性は低いですが、訴訟を提起し、その訴訟手続の中で「文書送付嘱託」という手続を行う方法 が考えられます。
2 加害者が起訴されて刑事裁判手続き中の場合
被害者およびその遺族は、裁判所に対し、刑事記録の謄写申請が可能です。
この方法は、裁判所が、刑事裁判に関わる検察官、被告人(加害者)、弁護人の意見を聞いて、閲覧謄写をさせることが相当でないと裁判所が判断する場合を除き、刑事記録を被害者およびその遺族に閲覧謄写を認めるものです。
3 加害者の刑事裁判が確定した場合
検察庁において、刑事記録の閲覧謄写が可能です。
刑事記録の取得手続きについては、本人で行うことも可能ですが、手続きが複雑なため、交通事故の専門家である弁護士に依頼して進めることをお勧めします。
弁護士 大隅愛友